EYEHATEGOD / ST

EYEHATEGOD (アイヘイトゴッド)

EYEHATEGOD (アイヘイトゴッド)


14年ぶり5枚目。まさかオリジナルアルバムでEYEHATEGODの新作が聴けるとは…と今年に入ったあたりからわくわくしてました。初めて聴いたのはもう20年近くも前になるんだと思うと目眩がしますね…。

バンド名以外の情報をほとんど知らずに手に取った1stはほとんど事故のようなもので、当時は確かデスメタルもCATHEDRALの1stも通過済みで、激しい音楽にはそこそこ免疫ができつつあったのに、再生して2〜3曲でいやーな気持ちになったのを覚えています。スローでヘビーなのに突然スイッチが入ったかのように突っ走る展開や、なんかもういやーな感じしかしない絶叫ボーカル、サバス風なのに全然メタルっぽくないグラグラしたグルーブ、田舎の離れでいやーなことが起こっているのを壁越しに聴いているかのような劣悪な音、などなど、何じゃこりゃ的な驚きにあふれておりました。


さて、肝心の新作の感想としては、「音良くなったなー」「でもかっけー」という頭の悪い2センテンスくらいしか浮かんできませんが、楽曲も演奏もいい意味で相変わらずで、よい1枚だと思っています。




個人的に、EYEHATEGODというと「サウンドプロダクションにこだわりがあるバンド」というイメージを持っています。これは、高音質ないわゆる「いい音」で録音するバンド、ということではなく(そういう意味では真逆)、自分たちの表現したいもの―楽曲、演奏、歌詞、世界観に合ったサウンドプロダクションで録音するという意味で、1stとか、音質は劣悪ですが、あの音が、曲・演奏・ジャケットなどの世界観にあまりにもぴったり合っていて、あの音質しか考えられないくらいのハマりっぷりです。

楽曲が整理されてEYEHATEGODのスラッジが完成した2ndでは音質の方も少し整理されると同時に生々しくごっつい音になったし、それをさらに突き詰めた3rdでは嫌がらせのような低音ブーストの極悪音に。
復活後の4thから、それまであったサザン成分が増大されて聴きやすさが増して、音の方もパートの分離がよいクリアなものに変わりましたが、このアルバムの延長にあるようなのが本作。いわゆる高音質ではないけれども、音が悪いなあと思う人はいないんじゃないだろうか。


作品ごとに作品に見合った音を選択するのはミュージシャンなんだから当たり前なんだろうけど、彼らはかなり強く意識してるんじゃないかなーと勝手に思っているのです。実際、今回はストレートなハードコアナンバーもいくつか入っていて、スラッジな曲にしても、あまり拷問のような場面はなく、楽曲的にも聴きやすいものが多い気がします(彼らにしては)。


正直もの物足りない部分もなくはないんですが、災害やメンバーの死や投獄を乗り越えてこうして新作を出してくれてありがとうという気持ちでいっぱいです。あと、物足りない部分もライブ見たら多分消えて無くなりそうな気もします。
極端な音が後退したおかげで、彼らの持っている普遍的な魅力が浮き上がってきたようにも思われ、まだEYEHATEGODやスラッジ、ストーナーなんかを聴いたことがない人にもお勧めしたい1枚でした。


EYEHATEGOD / ST